最近、プロ意識と言う言葉に共感を覚える。たとえばプロのサッカー選手を見てみよう。日本には多くのプロサッカー選手がいるが、才能とチャレンジ精神がある選手は、さらなる努力を惜しまず、たとえ言葉が喋れなくても、ヨーロッパのよりレベルの高いチームに移籍して、レベルの高い環境の中で自分の実力をさらに高めようとする。その代表例がイギリスのマンチェスターユナイテッドの香川真司、あるいはイタリアのインテルの長友佑都だろう。一般に選手生命の短いサッカー選手が、必死になって挑戦する姿は実に感動的である。
私たち皮膚科専門医は、皮膚病を診療するプロフェッショナルである。私たち皮膚科医にも、これらのサッカー選手たちに決して負けないような、強いプロ意識が望まれる。例えば診断・治療に難渋する患者に出会った時には、私たちには正しい診断・最高の治療が提供できるよう、妥協を許さず勉強する責務がある。そうすることによって、患者さんは救われ、皮膚科専門医としての社会貢献にもつながる。さらにそれほど勉強したなら当然、たくさんの英語論文を読む必要があり、そこまで勉強すると、英語の症例報告論文を書き、世界の仲間に貴重な自身の経験を伝えたくなるはずだ。私は若い教室員に、受け持ち患者を持ったら徹底的に勉強して、患者さんに最高の医療を提供してくださいと毎週言い続けている。
皮膚科医としての強いプロ意識を持っている人は、症例報告が書きたくなるほど一生懸命勉強する。逆にプロ意識が薄い人はそこまで必死に勉強できないし、論文も書けない。サッカー選手でいえばJ2チームのレギュラーで満足するか、あるいは人一倍努力してヨーロッパチームへの移籍を勝ち取りたいと思うか否か、というプロ意識の違いになる。
北大皮膚科は臨床・教育・研究すべての面で、常に世界トップレベルの皮膚科学教室であり続けたいと思っている。世界の皮膚科学の舞台で堂々と活躍できる、もしくは、世界的レベルの臨床力で患者さんに向き合えるような若い教室員をさらに一人でも増やし、教室全体の皮膚科総合力、いわゆる「教室力」を高めていきたい。「教室力」は一朝一夕に育つわけではないので、教室員1人1人の長所を伸ばし、広い視野と長期的展望にたって教室力を高め、その環境のなかで研修医教育を行えば、新たな良い教室の伝統が生まれるはずだ。
人生は一度しかない。教室員は皮膚科医の道を選んだ以上、強いプロ意識とプライドを持って、世界トップレベルの「出来る皮膚科医」を目指し努力し続けてくれることを願う。私自身も教授として強いプロ意識を持って、「教室力」をさらに高めていきたい。